眠りの科学

“寝なきゃ”が、あなたを眠れなくしている|眠れない夜の、力の抜き方

今夜のポイント

眠ろうとする「努力」そのものが、ときに眠りを遠ざけてしまう。だから今夜は、無理に眠ろうとしなくていい。

眠れない夜だね。

こんな時間にこのページを開いたということは、たぶん今夜も、うまく眠れずにいるんだと思う。時計の数字が進んでいくのを見ては、「早く寝なきゃ」と気持ちが急いてしまう。明日のことを思い浮かべると、なおさら目が冴えていく。布団の中で、そんな夜を過ごしているんじゃないかな。

でも、こんな時間に起きているのは、あなただけじゃない。そして、ひとつだけ伝えたいことがある。眠れないのは、あなたの意志が弱いからでも、努力が足りないからでもない。むしろ逆で、“眠らなきゃ”と強く思うほど、目は冴えていく ── そういう仕組みが、どうやらあるみたいなんだ。

なぜ、”寝なきゃ”と思うほど眠れなくなるのか

眠るという行為は、本当は「がんばってやる」ものじゃない。呼吸をしたり、お腹が空いたりするのと同じで、本来はからだが勝手にやってくれる、自動的なはたらきなんだ。意志の力で「さあ眠るぞ」と命令して眠れるものでは、もともとない。

ところが、「眠らなきゃ」と強く意識した瞬間に、その自動のはたらきにブレーキがかかってしまう。眠りにばかり注意が向き、眠ろうと意図して、眠ろうと力む。この一連の「眠ろうとする努力」そのものが、からだが休息モードへ切り替わるのを、かえって邪魔してしまうんだ。

こんな研究がある

睡眠研究者のエスピーたちは、眠りへの「注意・意図・努力」が、かえって自然な入眠を妨げる経路がある、と提唱しているよ。彼らによれば、正常な眠りは意志では生み出せない半ば無意識のプロセスで、コントロールしようと意識を向けるほど抑えこまれてしまうという。この眠ろうとする頑張りは《睡眠努力(sleep effort)》とも呼ばれているんだ。

出典:Espie et al., 2006, Sleep Medicine Reviews / Broomfield & Espie, 2005, Journal of Sleep Research

つまり、あなたが感じている「寝なきゃと思うほど眠れない」という感覚は、気のせいでも、心の弱さでもない。たくさんの人が、同じ仕組みの中でもがいている、ということなんだ。だから、まずは自分を責めるのを、そっとやめてあげてほしい。

じゃあ、今夜はどうすればいい?

答えは、少し意外かもしれない。眠ろうと、しなくていい。

眠りは、追いかけると逃げていく。力を抜いて、来るのを静かに待っているうちに、いつのまにかすぐそばに来ている ── どうやら、そういうものらしい。「眠るぞ」という気合いを、いったん手放してみる。それが、遠回りのようでいて、いちばんの近道になることがある。

こんな研究がある

不眠の研究では、ベッドの中で無理に眠ろうとする代わりに、「むしろ、静かに起きていよう」と肩の力を抜くアプローチも調べられてきた。眠らなければというプレッシャー(眠りへのパフォーマンス不安)を手放すこと自体が、入眠を助けうる、と考えられているんだ。これは医療行為や治療法としてここで勧めるものではなく、あくまで一つの考え方の紹介だよ。

出典:Jansson-Fröjmark et al., 2022, Journal of Sleep Research(系統的レビュー・メタ分析)

具体的に、今夜からできる「力の抜き方」を、いくつか並べてみるね。どれも、やらなきゃいけない宿題じゃない。気が向いたものを、ひとつだけ試すくらいで、ちょうどいいよ。

“寝なきゃ”の夜に、やりがちなことかわりに、できること
時計を何度も見て、残り時間を数える時計を、手の届かない・見えない場所へ置く
「早く寝なきゃ」とベッドで力む眠ろうとせず、ただ目を閉じて、休む
眠れない自分を、責めてしまう横になっているだけで、からだは回復していると考える
明日を心配して、頭の中で予行演習する心配ごとは「夜が見せる幻」と知って、朝に回す

眠れなくても、からだは休んでいる

たとえ「一睡もできなかった」と感じる夜でも、暗い部屋で横になり、目を閉じているだけで、からだはちゃんと休息をとっている。だから、「眠れた/眠れない」の二択で、自分を採点しなくていい。今夜は休めていれば、それでじゅうぶん。そう思えるだけで、肩の力が少し抜けるはずだよ。

そっと、ひとつだけ

ここで話したのは、眠れない夜とのつきあい方の一つの考え方で、感じ方には個人差があります。眠れない状態が長く続いたり、つらさが大きいときは、一人で抱えこまないで、一度お医者さんや専門家に相談してみてね。それは弱さじゃなくて、自分を大切にすることだから。

今夜は、何もしなくていい。眠ろうと頑張らなくていいし、眠れなくても大丈夫。この音といっしょに、ただ、ここにいて。眠りは、あなたが力を抜くのを、静かに待っているから。

そして、もし「自分の今夜は、どんなタイプの眠れなさだろう」と気になったら、よかったら気分診断をのぞいてみて。今夜のあなたに合う、夜の過ごし方と音楽を、いっしょに探すよ。

おやすみ。

ねむ / 快眠LABO

この記事は夜のセルフケア情報として公開しています。音や眠りの感じ方には個人差があります。眠れない状態が続く場合は、医師や専門家へご相談ください。