眠りの科学

熱帯夜に眠れないあなたへ|エアコンは”つけっぱなし”が正解?

今夜のポイント

熱帯夜に眠れないのは、あなたの気合いの問題じゃなくて、暑さで「体の奥の熱」が逃げられないから。そして暑い夜は、眠りの質だけでなく「夜の熱中症」にも気をつけたい時間なんだ。今夜は、エアコンと上手につきあう方法を、いっしょに見てみよう。

夜になっても、ちっとも涼しくならない。布団に入っても寝つけなくて、やっとうとうとしても、汗ばんで目が覚めてしまう ── そんな夏の夜を過ごしていないかな。

夜の気温が25℃を下回らない夜のことを「熱帯夜」と呼ぶよ。こういう夜は、たくさんの人が同じように眠れずにいるんだ。ある調査では、熱帯夜になると睡眠に悩む人がぐっと増えて、都心や内陸では3割近くにのぼった、という報告もある。だから、眠れないのはあなただけじゃない。今夜は「暑さ」と「眠り」、そして見落とされがちな「夜の安全」の話を、いっしょに整理してみよう。

暑い夜に眠れないのは、体の熱が逃げられないから

以前、梅雨と睡眠の話でも触れたけれど、わたしたちは眠りに向かうとき、体の奥の温度 ── 「深部体温」 ── が、すこしずつ下がっていく。手足がぽかぽか温かくなって、そこから熱を外へ逃がし、体の奥をクールダウンさせる。これが「そろそろ眠る時間だよ」という、体からの合図なんだ。

ところが、熱帯夜のように寝室が暑いと、この仕組みがうまく働かない。まわりが暑いと、体の奥の熱を外へ逃がせず、深部体温が下がりにくい。だから寝つけなかったり、眠りが浅くなったりしてしまう。湿度が高いと、汗が蒸発しにくくなって、さらに熱が逃げづらくなるんだ。暑い夜に眠れないのは、あなたの心がけのせいじゃなくて、れっきとした体の都合なんだよ。

エアコンは、消す? つけっぱなし?

いちばん迷うのが、ここだと思う。「つけたまま寝ると体に悪いかも」「電気代も気になる」── そう思って、タイマーで途中で切る人も多いよね。でも、いまの夏の夜については、睡眠の専門家の多くが、ある共通のことを話しているんだ。

こんな話がある

睡眠の専門家は、熱帯夜には「冷えすぎない温度で、朝までエアコンをつけっぱなしにするほうが、室温が安定して眠りやすい」と話しているよ。途中でエアコンが切れると、室温がまた上がって、暑さで目が覚めてしまう。とくに、寝ついて1〜2時間ほどで切れるタイマー設定は、すすめられないんだ。眠りはじめの時間帯は、いちばん深い眠りが多くあらわれる大切な時間。そこで暑さに起こされると、深い眠りが減ってしまう。だから、少なくとも眠ってから4時間ほどは、つけたままにしておくのがいい、と考えられているよ。

出典:西多昌規(早稲田大学)/三橋美穂・白川修一郎ほか 睡眠の専門家の解説

「つけっぱなしは体に悪いのでは」と心配になるかもしれないね。たしかに、冷たい風が直接あたり続けたり、体が冷えすぎたりするのは、だるさや体調をくずす一因になる。だからこそ、大事なのは「切る」ことではなく、「冷えすぎない温度で、つけ続ける」ことなんだ。次に、その「ちょうどいい温度」の話をするね。

「設定28℃」の、よくある勘ちがい

「エアコンは28℃」── そう聞いたことがある人は多いと思う。でも、これにはちょっとした誤解があるんだ。

「28℃」というのは、もともと環境省が示している「室温の目安」のこと。つまり、エアコンの設定温度を28℃にする、という意味ではないんだ。部屋の広さや、日あたり、その日の暑さによって、設定28℃でも室温が28℃まで下がらないことはよくある。設定温度ではなく、部屋の温度そのものを見てあげるのがコツだよ。設定を28℃にしても暑いままなら、もっと下げて大丈夫。最近は「28℃にこだわりすぎず、自分の体質や部屋に合わせて柔軟に」という考え方が広まっているんだ。

よくある思いこみほんとうのところ
エアコンの設定を28℃にすればいい28℃は“室温”の目安。設定28℃でも室温が高いなら、下げていい
つけっぱなしは体に悪い冷えすぎなければ、つけっぱなしのほうが室温が安定して眠りやすい
節電のため、寝たらすぐ切りたい寝はじめに切れると深い眠りが減る。少なくとも4時間はつけたままに
とにかく涼しくすれば快眠できる冷えすぎ・直接の風はだるさのもと。風は体に当てない工夫を

睡眠の質を考えるなら、寝室は室温25〜26℃、湿度50〜60%あたりが、ひとつの目安とされているよ。ただ、心地よい温度には個人差があるから、これも「正解の数字」ではなく「出発点」として、自分の気持ちいいところを探してみてね。湿度が高い日は、温度を下げるより、除湿(ドライ)にすると楽になることもあるよ。

暑い夜は、「眠り」だけでなく「いのち」の話でもある

ここは、すこしだけ真面目に伝えさせてほしい。暑い夜は、眠りの質だけでなく、夜の熱中症にも気をつけたい時間なんだ。

こんな話がある

熱中症というと、日中の外を思いうかべるかもしれない。でも、救急搬送される高齢の方の熱中症は、その多くが「屋内」で起きているんだ。日中に壁や天井にたまった熱が、夜になって部屋の中へじわじわ伝わり、外が涼しくなっても、室温は高いまま ── ということが起こる。そして、眠っているあいだに気づかないまま、汗で体の水分が失われていく。「夜だから」「家の中だから」と油断せず、暑い夜はエアコンを使って室温を保つこと、枕元に飲み物を置いておくことが、自分や家族を守ることにつながるよ。

出典:日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」/環境省 環境保健マニュアル

とくに、年齢を重ねた方や、小さなお子さんは、暑さを感じにくかったり、自分で調整しにくかったりする。もし、はなれて暮らすご家族や、となりで眠る大切な人がいるなら、「暑い夜はエアコンをつけてね」と、ひとこと伝えてあげてほしいな。それは、眠りのためであり、いのちを守るための、やさしさだから。

それでも「朝、だるい」と感じる人へ

「エアコンをつけて寝ると、朝なんだかだるい」── そう感じる人もいるよね。じつは、ここは正直にお話ししておきたいところなんだ。

こんな話がある

意外かもしれないけれど、「エアコンで翌朝だるくなる」という仕組みを、はっきり確かめた研究は、まだ少ないんだ。睡眠の専門家も「夏のエアコンの冷気で朝だるくなるメカニズムを実証した研究は見あたらない」と話している。だから「だるさ」は、冷えすぎや、風が直接あたることなど、別の理由から来ている可能性もあるんだ。対策としては、まず送風が体に直接あたらないようにすること。それでもだるい人は、起きる1時間ほど前にエアコンが切れるよう設定する方法もある ── ただし、これもまだ確かめられた方法ではなく、ひとつの試し方として、だよ。

出典:西多昌規(早稲田大学)の解説

だから、「だるくなるからエアコンは使わない」と我慢して、暑さや夜の熱中症のリスクを抱えるより、風を体に当てない工夫をしながら、つけ続けるほうが、体にはやさしいことが多いんだ。冷えが気になるなら、薄い長袖を着たり、おなかにタオルケットを一枚かけたり。そんな小さな工夫で、ずいぶん変わるよ。

今夜の、小さなまとめ

暑い夜のことを、ぎゅっとまとめておくね。①暑くて眠れないのは、体の熱が逃げられないから。あなたのせいじゃない。②エアコンは、冷えすぎない温度で、朝までつけっぱなしが基本。③「28℃」は室温の目安。暑いなら設定を下げていい。④暑い夜は、夜の熱中症にも気をつけて。枕元に飲み物を。⑤朝のだるさが気になるなら、風を体に当てない工夫から。

暑さで眠れない夜は、心まですり減ってしまいそうになるよね。でも、涼しくととのえた部屋で、ただ横になって目を閉じているだけでも、あなたの体は、ちゃんと休もうとしている。今夜は、がんばらなくていい。涼しくして、楽にして、ゆっくりやり過ごそう。

だいじなお願い

この記事は、夜のセルフケアに寄り添うためのもので、医療行為ではありません。感じ方や心地よい温度には個人差があります。強い頭痛・吐き気・めまい・体のほてりなど、熱中症が疑われる症状があるときは、がまんせず、すぐに涼しい場所で体を冷やし、水分をとり、必要に応じて医療機関や救急にご相談ください。暑い夜の不調や眠れない状態が続くときも、一度お医者さんに相談してみてね。

この記事は夜のセルフケア情報として公開しています。音や眠りの感じ方には個人差があります。眠れない状態が続く場合は、医師や専門家へご相談ください。